2022/12/11

ナンバーガール無常の日を観た。2022年12月11日、ナンバーガールが解散したんです。5年前とかにそう言われたら本当に意味不明だ。クソつまらん謎のボケじゃんって思う。


今でも思い出す、2010年、夏休みに入る直前だったはずだから7月とか、当時明石高専に在学していた俺はC言語についての講義の最中、ニコニコ動画を見ていた。情報基礎演習室という、50台ほどのPCの設置された教室。

スクールガールディストーショナルアディクトを聴いて、なんかよく分からんけど音が悪いなと思っていた。だからわざわざナンバーガールのライブ動画を見たりはしなかった。

その日はベースボールベアーのPVを見ていて、関連動画に1999年RSR透明少女の動画が出てきた。なんの気無しに再生した。なんかもさついた見た目の男がよく分からんことを言って、閃光のようなギターが右耳に飛び込んできて、もうそれは、疾走、疾走するバンドミュージックが始まった。叩きつけるように歌い、歯並びが悪いんですよ、そしてとにかくドラム、ドラムがドコドコしすぎ、でもなんかすごいキラキラだった。煌びやかな疾走。今でもあの日の感じを思い出す。周りにはクラスメイトがギッチリ着席していて、いろんなノイズがあるはずなのに、ナンバーガールの音や映像しか感じない、鳥肌が立って目が離せない、なんか分からん、分からんけど、ああこれだ!これなんだ!って思う、人生で何度感じられるかわからないあの感覚、今でも思い出す。


あれから10年近く経って、ナンバーガールは再結成を発表した。向井秀徳オタクたちは向井秀徳オタクであればあるほど意味不明だったと思う。彼は一度終わらせたものをもう一度やるような男でないと思うのだ。だからこそ、再結成には大きな期待があった。ただ集まって懐かしんで演奏するだけの同窓会ちっくなものじゃない、何かとんでもないことが始まる予感がした。居ても立っても居られず、再結成が発表された日はこっそり職場を抜け出し、テレキャスターをアンプに繋いでイギーポップファンクラブを歌いながら号泣した。(終業時間には職場に戻って何食わぬ顔で退勤した。)


そしてみなさんご存知のように、ナンバーガールは何倍何十倍にもパワーアップして帰ってきた。僕にとっては、もうずっと大好きだったバンドが、もっともっと好きなバンドになった。向井秀徳がただ再結成をするわけがない、その答えは今のナンバーガールをやるということだったと思う。彼らのパワーは日を追うごとに高まり続け、本当に嬉しかった。

いまだに信じられない。私たちはナンバーガールの存在する時代に立ち会った。何より、ナンバーガールが時代を刻むその瞬間に立ち会った。何度見たか分からない「ナンバーガールの歴史を、今ここに終了する。」そして、歴史はまた始まり、間違いなく更新した。今にいる、ナンバーガールは今にいたんですよ。そう、ナンバーガールが今にいたんです。何度見たか分からないあの映像の先に、ナンバーガールがいたんです。


そうしてメキメキとありとあらゆるものを蹴散らしながら炸裂し続けてきたナンバーガールは、2022年のRSRにて解散を発表した。正直なところ、まぁそうだよなと思った。そもそもこんなに長いことやってくれると思わなかった。世の中の情勢もあって延びたのだと思うが… ただ、この3年くらいという期間は結果的に練度を高めるのに貢献したと思う。再結成して1年で解散していたら、また全然違ったと思う。

そんなナンバーガールの解散公演、無常の日を迎えた。不思議とフラットな気持ちだった。なんとなく彼らの心境は穏やかで清々しいだろうと予想していたので、そのおかげだと思う。もちろん寂しくて切ない気持ちもあったが、それよりも大好きなバンドがこんなにもハッピーな結末にたどり着いたことが本当に嬉しかった。とてつもないパワーの高まりはきっと本人たちも実感しているだろうし、ここでおしまいというのは引き際としてひとつの正解だと思う。


ここからライブの記録をします。
マーキームーンが流れて、泣いた。ナンバーガールが再結成してから5回ライブを観たけれど、毎回泣く。何回観ても信じられない。これからナンバーガールのライブが始まるんだって思うと、途端に17歳の自分を呼んできてしまう。

大当たりの季節が始まって、泣いた。スクールガールバイバイ!なんなんだよ本当に、なんでやるんだ、昔の曲を。泣いちゃうだろ。

それから透明少女が始まって、あ、これはまた後でやるなと思った。でも4回もやるとは思ってなかった。楽しかった。
オモイデインマイヘッドはもちろん泣いた。ただ向井の声が出てなくて、後半でもう一回やってほしいなって思った。最近の傾向的に後半だんだん声が出るようになってるので。でもそもそもなんで同じ曲を何回もやるのが当たり前になってるんだ。あとオモイデインマイヘッドは一回しかやらなかった。なんでだよ、もう一回やってくださいよ。

鉄風鋭くなってに入る時にボーカルのリバーブがドライな質感になってて、え!これが完璧じゃん!って思った。めちゃめちゃ嬉しかった。PAさんと解釈一致だった。

エイトビーターは再結成してから特に大好きになった。初めのドゥーンってベースの音で拳を突き上げた。ナンバーガールの良さっていろいろあるけれど、みんなで一生懸命同じリズムを鳴らす様にその良さのうちのひとつがあると思う。


ナムアミダブツは、とにかくヤバかった。イントロのひさこさんのギターがヤバすぎてドキドキした。全体通してもキワキワだった。完璧だった。これがナムアミダブツだった。

チビッコさんはちびっこサンバという名前になった。その口上で始まってナカケンがプリプリ踊りながらベースを弾くので、普通に楽しくなっちゃった。でもめちゃめちゃいい、演奏が。もうこの辺りからは全曲キレキレになっている。ナムアミダブツ以降は本当にもう完璧だった。


桜のダンスは大好きなんです。この頃にはものすごく楽しくなっていた。大好きなバンドの最高の演奏。今まで観たナンバーガール、昔の映像から再結成して今までのライブ、間違いなくそのどれよりもいい演奏だった。嬉しかった。この場にいられて本当によかったと思った。

水色革命、トランポリンガール(新)、ヤングガール〜は昔よりもキャッチーでキラキラで、本当に好きだ。昔よりも全員表現力が増してると思う、楽器も歌も表情豊かで、キャッチーな曲が本当に映える。水色革命は嬉しすぎて泣いた。夢かもねじゃないんですよ… トランポリンガールはひさこさんのギターの音がよすぎて泣いてた。


ユーレイがおれは好きだ。好きな曲多すぎなんですけども。間奏で情報過多なエンターテイメントが繰り広げられていて、気持ちがおもしろのモードになっていたけれど、死神とは手を組まないのところで泣いてしまった。ここで毎回泣いてしまう。なんか分からないけれど、ああこの人は本当にそう思っているだろう、そう思っていてくれ、って思う。

ブレークタイムは写真もだけれど、スーパーヤング流すのはずるいと思う。「炸裂するノイズの中で僕達は青春の息吹きを感じている」「いつかくる終わりの季節」「いつまでもいつまでも変わらない僕らです」ね、ずるいよね。


ブルータルナンバーガールはエイトビーターと同じくみんなで同じリズムをやる曲ですけども、このタイミングではもう仕上がりまくっているのでヤバすぎでした。この曲大好きなんだ。シンプルなリフだけど印象的で、ふとした瞬間に弾く。今日聴けると思わなかったんだ。嬉しかった。

裸足の季節はさ!ヤバかったよね。もうね、語彙が追いついてきませんけども、裸足の季節すぎた。他の曲は結構昔と変わったりしてるなと思うけれど、この曲は昔のイメージのまま、そのままパワーアップしている。一度解散したナンバーガールだけど、それでもそれぞれがそれぞれの道を歩みながら、地続きでここに来たんだよなって思って、涙が出た。あと、ナンバーガールのことを思うと、昔の自分のことも思い出してしまうんだよなって思った。おれはナンバーガールが大好きなんだ、もうずっと。


排水管さ、エグくなかったですか?この曲はナンバーガールの曲じゃないですよと向井はしきりにいうけれど、ナンバーガールの曲にしてほしいよ。レコーディングしてほしい。キラキラしたメロディ、刻むベース、随所にフィルを挟むドラム、そしてキャッチーでパンチのあるギター、どこを取ってもナンバーガールだったよ。ひさこさんのギターが本当によかった。最後のサビは変に寂しげで、終わりに向かっているんだって感じた。悲しい終わりじゃないのは重々承知しているけれど、やっぱり寂しいと思った。

タトゥーあり、ギターソロがすごすぎた。これも今までのどのテイクよりもいい、やっぱり今日が最後なんだって感じた。この時、なんとなく、本当はみんなもう少しやりたかったんじゃないかなと思った。だけど、それでも向井の判断が正しいと思ったのかなとも。みんな向井を信頼しているだろうと思う。おれだってそう。


それから、いつもの前口上の後にタッチが始まった。ああいよいよおしまいが来るのだと思った。苛立ちやもどかしさを歌うこの曲が終わらないでほしいと思った。ナンバーガールの潔さがずるいと思った。かっこよくてずるいと思った。

アイドンノウはフジロックの配信の時にも思ったが、とにかく爆発力がすごい。昔はギラついた、鬱屈とした気持ちをぶつけるような爆発があったが、今はそれぞれのエネルギーを研ぎ澄ましてぶつけ合うような印象がある。ワクワクするエネルギーのぶつけ合い。


アンコールなかったらどうしようと思ったが、案外普通にあった。客電がつくこともなく、確定演出って感じだった。

イギーポップファンクラブが始まって、いよいよおしまい感があった。メンバーの表情がすごく穏やかでにこやかで、嬉しかった。こんなに幸せな解散でよかったと思った。そして、イギーポップファンクラブで終わるかと思ったが、トランポリンガール(旧)を演奏して終わった。なんとなく向井らしいと思った。向井の茶目っ気はニヤニヤしている感じでいい。ていうか、再結成してアンコールでこの曲をやるのはずるいと思う。スクールガールバイバイなんだよ、これも。ずるいよね。


それで、メンバーがはけて、客電が点いて、でも拍手が止まなくて、4回目の透明少女が始まった。これで終わりだってみんな分かってたと思う。もはやギャグみたいな1公演4回目の同曲の演奏で、会場は完全に一体になっていた。思う存分拳を突き上げて手を叩いて、楽しかったねおもしろかったね、よかったね嬉しかったね、の気持ちでナンバーガールの解散公演は幕を閉じた。


言葉にならないと思った。こんなにいいバンドがこんなに素敵なおしまいを迎えて、何を言えばいいかわからなかった。とにかくみんな幸せでいてほしい。おれはナンバーガールが大好きだから、幸せでいてほしいよ。

でもTwitterでは結構みんないろいろ言ってて、すごいと思った。曲単位での感想なら言えるけれど、今日ナンバーガールが解散公演をやって解散したことについてはなんかもう言えないですよ。いろんな気持ちがある。そのうちまとまってくるとは思う。


ただ、解散を発表した時、向井は諸行は無常であると言ったけれど、今日を経て、それはすごく正しいと思った。一度は別れたメンバーが集まってしばらく一緒にいて、また別れて、それぞれの道へ進み、そしてまたいずれ出会うことがあるのかもしれない。それこそが諸行無常であると思った。もうずっと正しいことを言ってるのかもしれない、向井は。蘇る性的衝動の意味もいずれわかるだろうか。

これを書いていたら午前3時を過ぎた。明日はホテルで朝食を取るので7時には一回起きたい。おやすみなさい。