2017/08/06(日)

昼からバイトだった。休日ということもあってか普段より来店する人数は多く、そこそこ忙しかった。普段は1時間で1人くらいしかお客さんが来ないので、時間の過ぎるのが本当に遅くて困る。そういう点ではちょうどいい日だった。

途中、かなり小さな子供が話しかけてきた。「お母さんいなくなっちゃった。」まぁ迷子だと思うが、このフレーズだけを聞くと非常に危うい状態だなと思った。どこからここに来たのか、おかあさんといっしょにいたのはいつまでだったか、おかあさんはどこに行くとか言っていなかったか、聞いてみるけれど、その子は全部「分からない。」と答えた。困ったなぁと頭を掻く。その子は特に泣いたりすることも無く、きょろきょろ辺りを見回したりしていた。バイト先は商業施設の中のテナントなので、家族連れはかなり多く、泣く子供もよく見かける。その点、強いなと思ったし、こういう子供になりたいなと思った。もうなれんけどさ。困ったなぁと思っていたら「あ、いた。」と呟き、その子は駆け出していった。「もう、どこいってたの!」という声が少し遠くから聞こえてきて、安心した。俺のほうがよっぽど不安になってたかもしれないな。そのくらい落ち着いてたあの子は。

 

バイトを終えて帰宅し、何本かアニメを見たあと、夕飯を作った。とてもうまく出来てよかった。少し作りすぎてしまったので残りは明日の昼食にでも回そうと、一旦台所に運んだ。そこで手を滑らせて皿をひっくり返してしまった。宙を舞う鳥のササミ。バウンドする木製の食器。香るネギ。控えめに言って最悪だった。おいしくできたのにさ。

 

ふてくされながら片づけを済ませ、もう何もする気になれない状態になった。嫌なことがあると何も出来なくなる。シャワー浴びなきゃな、でも面倒だな。気づいたら2時間経っていた。ようやく浴室に向かう気になって立ち上がったその瞬間、めったに鳴らない電話の着信音が鳴った。ライン通話でもなく、普通の電話。誰だよと思ってみると、高専の時の先輩だった。その先輩はなかなかぶっ飛んでる人で、悪い人じゃないけどやばい人。もう電話かかってきた時点でめっちゃおもしろいし、さらにおもしろくなるだろうと思って電話に出た。

ラズベリーって覚えとる?」先輩はそう言った。もちろん覚えている。トライセラトップスラズベリー。とても好きな曲だ。高専時代には俺がギターを弾いて、先輩が歌って、演奏を披露したことだってある。それのギターをコピーしたから聴いてみて合ってるか判断して欲しいとのことだった。当時、先輩はギターがお世辞にも上手いとは言えなかったが、もうあれから5年近くも経っているし、ついに耳コピもできるくらいになったんだなぁと感慨深くなった。が、それは一瞬で覆った。聴かせてもらった演奏からはまったくラズベリーを読み取れず、もうクソだった。あきれて、そして当時もこんなどうしようもない人だったなと懐かしくなって、笑った。その後は電話越しに不毛なギターレッスンを行った。俺だってギターうまいわけじゃないのにさ。ずっと半笑いだった。

 

そのうちまた共演しような、と言われた。そんな日が来たら、ずっと笑ってる気がするな。たまには電話がかかってくるのもいいなと思った。それが誰からでも。

 

♪Fever/TRICERATOPS